霞町物語 |浅田 次郎
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霞町物語
浅田 次郎
講談社 刊
発売日 2000-11
価格:¥520(税込)
「僕の」目に映った美しい祖母の姿 2006-04-24
初めて読む作家の短編集だ。著者の名前は知っていたが、ついぞ作品を読む機会がなかった。
いま、小生は闘病生活中で、唯一の楽しみはラジオを聴くことだ。そのなかでも毎週日曜日の深夜にNHKラジオ第1放送で10時15分から始まる短編の朗読番組である「文芸館」が何よりも好きだ。
アナウンサーの朗読の声が耳に心地よく響く。風景描写や登場人物の感情の起伏のそこかしこに入る音響効果が臨場感をかもし出す。
この番組を聴いた途端に現物を読みたくなる衝動に駆られ、翌日には放送された作品を入手すべく手配をする。そうして活字を読み、再び感動に浸る。アナウンサーの朗読の声がまた耳に蘇る。
今回は『霞町物語』所収の短編「雛(ひな)の花」と出あった。
8編の連作で、4編が青春時代の恋愛と4編が幼年から少年にかけての家族の思い出とからなっている。小生は恋愛編よりも家族編が胸を打たれた。
その後半の4編のひとつに祖母の思い出を扱った「雛の花」がある。
明治生まれの「僕」の祖母は生粋の江戸っ子で、あでやかで美しく、白黒をはっきりさせぬと気がすまぬ人であった。
帰宅途中で立ち小便をした子供がいたとお節介な通行人から学校に通報があり、朝礼のあとで犯人捜しが始まる。校長の追求がことのほか厳しく長かったので、お手洗いに行きたくなって「僕がおしっこをしました」と冤罪(えんざい)を買って出た。それを聞いた祖母は校長室に怒鳴り込みに行って、孫の無実を晴らす。
祖母によく歌舞伎に連れていってもらった。とある日ある紳士と会場で出会う。はっきりとはせぬが祖母の恋人のようだ。芝居が跳ねてから、つれなく立ち去る祖母。その後姿を追う僕。
掛け値なしに美しい祖母をこよなく慈しむ筆者。その筆には淀みがまったく感じられない感動の一遍だ。
NHKの同番組をお聴きすることをおすすめしたい。あなたも短編作品の虜になることは間違いない。
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この記事は2006/7/16に作成しました。
